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4月 春季大会
4月の春季大会。俺たちは、いつものように1回戦敗退で終わった。
試合開始直後、立て続けに2ゴール奪われて、追いつかなきゃ!!って、あせって自滅する黄金パタ~ン。
「あせるな。点を取られたくないからって、全員、ポジションが下がりすぎてる。だから、ゴールが遠いんだ。ほんの10分しか経ってないんだぞ。ほんの10分だ。これから30分もある。あせらなくていい。慌てなくていい」
「はいっ!!」
第1クォーターの後、顧問の鹿尾先生に言われて、全員、大きな声で、いいお返事したけど、頭でわかってても、心と体は、ぎくしゃく、ちぐはぐ。
あせってムダに動くから、ムダに体力、消耗して、第3クォーターで、沈黙の帝王・砂川が(第1・第2クォーター、ベンチにいる間、声も出さない、応援もしない砂川を、みんな、そう呼んでいる。本人だけが、ディスられてることに気付いていない。)、守谷とポイントガードを交替した時には、俺たちは、バテバテのグダグダだった。
結局、一度も追いつけず、ず~っとリードされ続けて、試合が終わってみれば、4点差で負けた。
たった4点。俺が3ポイントシュート、2回、決めれば、カンタンに逆転して、2点差をつけられるような点数だ。
こうなると、最初の2ゴールを防げれば…って、シューティングガードの俺は、思うのだった。試合開始直後、俺は3ポイントシュートを狙うために、ポジション上げてて、ティップオフのジャンプボールで、相手チームに取られたボール、追っかけて行ったけど、追いつけなかった。
俺、『ハイキュー!!』で、負けた後、みんなで大泣きしながら、ごはん、もりもり食べるシーン、大好きなんだけど、現実に、そんなことはなく、駅に着くたび、「じゃあ」とか「ばいばい」とか「お先、失礼します」とか言って、みんなは降りて行く。
ラストに俺一人、電車に残った。でも、だからって、涙が出て来ることもなかった。
日曜日の午後。ぎゅうぎゅうではないけど、混んでる電車。俺は足を引っ込めて、大きいバッグを膝の上に抱えて座ってる。
しょぼぼ~んとしてても、周りに伝わりづらい180cmの図体。一生懸命、おバカな頭の中で、今日の試合の反省をしていても、ぼーっとしてるように見られがちな、ぼんやり顔を、寝るふりして、俺はバッグに埋めた。バッグが臭くて、顔を上げる。鼻息、ふんふんして、臭いを鼻の穴から追い出す。家、帰ったら、ファブろう… バスケ部に入って、今まで一勝もしてない。公式戦も、練習試合も。
負けるのが当たり前。なんて、もう言いたくない。でも、俺たちは負けるのが当たり前だった。
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