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第三話 想い
「あった!」
――『南都犬猫病院』。院長先生の顔だろうか、デフォルメされた驚いた表情に、吹き出しで『なんと!!』と書かれたイラスト。その下に『南都犬猫病院』と書かれている。確かに目立つ看板だ。本当に動物病院なのか、疑いたくなる。
「すみません! すぐ診てください。」
驚いた様子で女性が顔を上げ、受付から急いで出てきてくれた。
「お預かりしますね、受付は後でいいですから。猫ちゃんね。先生!」
猫に引っかかれたであろう傷だらけの女性の腕に、マフラーごと猫を預け、私たちはその場に座り込んだ。
雪の影響だろうか、私たちの他に診察を待っている人はいなかった。
ぼんやりと病院に鳴り響く電話の音を聞いていた。慌ただしく電話に駆け寄る足音…。
どのくらい経ったのだろう。診察室から、少し年配の女性が出てきた。
「今、先生が診ているからね。低体温症になっているから、ゆっくり、ゆっくり体をあたためて、体温を戻しているから。猫ちゃんの体力を信じようね。」
「はい、……。」
私も優花も、涙が溢れてきた。
「ちょっと待っててね。」
年配の女性は、また診察室へ戻り、バスタオルを持って戻ってきた。
「まずは、二人とも、体を拭いてね。寒くない?」
「大丈夫です。」
「猫ちゃんのお名前を聞いてもいいかな?」
私たちは、顔を見合わせた。
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