第三話 想い

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「……分からないです。桜ヶ堀運動公園の堀で溺れていて、二人で助けたんです。」 なぜか必死に、その時の様子を二人で代わる代わる伝えた。年配の女性は、うん、うん、とうなずきながら、最後まで話を聞いてくれた。 「ありがとう。二人ともよく頑張ったね。大切な猫ちゃんを飼い主さんが探しているかもしれないから、調べてみるね。このまま病院で預かるから、念のため受付だけしてもらったら、帰っても大丈夫だよ。ありがとう。」 そして、今回はお金は要らないから、と付け加えてくれた。  ぼんやりとした気持ちで、『問診票』と書かれた紙に私の名前と住所を書く。動物の名前は空欄のまま……。このまま、帰っていいのだろうか。心に何か……、引っかかる……。ぼんやりとカードが頭に浮かんだ。 ――「10-運命の輪(正位置)」(現在) 05090f34-5a9d-4c95-a9f4-4b1c68496d24  「運命の輪」。このカードの一般的な意味は「運命、幸運、出会い、ターニングポイント」。 リーディングを始める――。  一枚目のカード「月」。  今まで私は、自分の力を見ないようにしていた。  不思議な力に気づかないふりをしていた。  二枚目のカード「運命の輪」。  しかし、運命は動き出した。  もう見ないふりは出来ない。あがなうことは出来ない。  ――『新しい出逢い、幸運の訪れとともに……。運命の車輪は回り始めた』  このまま帰りたくない!
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