プロローグ 私とタロット

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 3月下旬――。  季節外れの雪。もうすぐ春だというのに、雪が降っている。  中学校の卒業式を終え、やってみたかった『タロット』にはまっている。何かを占いたかったわけじゃない。でも、なぜか引き寄せられるようにカードに惹かれた。シンプルな「スリーカード」が好きだ。三枚カードを引いて「過去・現在・未来」と読み解いたり、「原因・結果・アドバイス」と読み解いたり、何も考えずにカードを引いたり……。三枚のカードからイメージを膨らまし、リーディングしていく過程がとても楽しい。 「あれ? タロット? 懐かしー。私も若い頃、恋愛運とか占ったなぁ。()ーちゃんにも、とうとう恋の悩みが来たかぁー。」 いたずらっ子のような微笑みを浮かべて、私を見るのは、優花の母親、円香(まどか)さんだ。私の中の例外の一人、一緒にいて落ち着く、唯一の大人。そう、ここは優花の家。 「占いなんて、占いサイトやアプリ入れちゃえば、一発じゃん! なんでわざわざー!?」 優花だ。外は寒いというのに、ガリガリ君を食べながら話しかけてくる。 「(さわ)れるものがいいんだ。目の前に、きちんと存在するから……。なんか安心するんだ。それに私、スマホ持ってないしね。」 タロットを見ながら、おっとりした笑顔で話すのは私だ。 「ふーん。まあ、確かに。スマホ持ってたとしても、こうやって会って話す方が楽しいもんね……。って感じ?」 「まあ、そんな感じ。あと、カードを読み解くことをリーディングっていうんだけど、リーディングは読み手の直観も入ってくるから、誰がするか、どう読み解くかで、同じカードの組み合わせでも、結果が変わってくることもあるんだよ。」 「ふーん……。……翠月(みつき)も一緒にアイス食べる?」 「ありがとう、寒いし、大丈夫。」 私は笑顔を見せる。ゆったりとした時間が流れている。
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