第一話 白昼夢

2/2
前へ
/17ページ
次へ
 静けさが戻る。もう一度、私の頭の中にタロットカードが浮かんだ。 ――「18-月(正位置)」(過去) bb8ceb22-3617-458f-8a54-6852d15eafb3  「月」。このカードの一般的な意味は「不安、不安定、はっきりしない様子」。 リーディングを始める――。  月の苦悩に満ちた表情。何かに気付かないふりをしているようにも見える。  月夜の光。神秘的な夜。空は青く染まっている。明るい。神秘的だ。  犬やオオカミは何かを感じ、月に吠えている。  ――『不思議な力に、気づかないふりをしている』  あの門の先には、月の光の下には何があるのだろう?  ザリガニが川の中から這い出して、門の向こう側に行こうとしている。  でも、這い上がれるかな? 川にいた方が安全なのに、なぜ?  月の光を目指して進もうとしている。  ――『這い上がろうと、川を……なぜ? 川……、川?!』 「川だ!」 「かわぁ!?」 優花が素っ頓狂な声を上げる。 「川って、この近くには無いよ! いや待って……。川みたいな堀はある。」 「桜ヶ堀運動公園!!」 二人は同時に声を上げ、転びそうになりながらも走り出した。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加