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第二話 猫と私
桜ヶ堀運動公園は市民の憩いの場だ。100台は停められそうな広い駐車場があり、郊外からも人が訪れる。川のような堀があり、いつもは釣りをしている人で賑わう。ジョギングをする人、犬の散歩をする人。春には桜並木が有名だ。今日は、というと、膨らみ始めた桜のつぼみが凍えそうに、でももうすぐ春だと主張するかのように、白い雪の下、淡いピンク色を放っている。人は、誰もいない。
「どこ?」
堀へと急ぐ。
「ゥワァーーーン! ゥワァーーーン!」
赤ちゃんの泣き声のような、悲痛な叫び声が響いている。やはり堀の方からだ。
「あそこ!!!」
指差す方向には、堀を這い上がろうとする黒い何か……。
「ゥワァーーン。 ゥ、ワァーン。」
ザリガニではなく……。
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