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9 四人での話
「ユリアナ」
口を閉ざした私にジェイクが声を掛けてきた。
「はい……」
「ここへ来る前にも話したけど、俺はユリアナと行動を共にすると決めている。 俺には家族もいないから、あの地に未練も無いということも言ったよな?」
「そうでしたね」
「俺は君の命を助けた。一度助けた命を見捨てる気は無いよ。第一そんなことをすれば夢見が悪くなるに決まっている」
「と言うことは……?」
「ユリアナが危険なことに身を投じると言うのなら、尚更だ。俺を信用して自分の秘密を明かしてくれたんだろう? 俺でよければ仲間にしてくれ。それに……何となくだが、ユリアナならこの無意味な戦争を終わらせることが出来るような気がするんだ。何しろベルンハルト公爵家の人間なのだからな」
ジェイクが笑みを浮かべて私を見つめる。
「私が……この戦争を終わらせる……?」
私の言葉に頷く彼。
「そうだよ」
自分がこの戦争を終わらせる……そんなことは考えたことは無かった。けれども今は
彼の言葉が何より嬉しかった。
「はい、それではこれから仲間としてどうぞよろしくお願いします」
するとジェイクが右手を差し出してきた。何のことか分からず首を傾げるとジェイクが言った。
「仲間としての握手のつもりなんだけどな?」
「あ、握手ですね? はい!」
私も右手を差し出すと、その手をしっかり握りしめられた――
****
ジェイクとの話合いが済んだ私はエドモントたちに声を掛け……皆で集まって未だに状況を把握していないラルフに自分の事情を説明した。
「な、何だって⁉ 貴女がユリアナ様だって⁉」
エドモントが驚愕の表情を浮かべて私を見た。彼が驚くのは無理も無い。けれど私と彼らにだけしか知り得ない第三部隊の頃の話をしていくうちに、ラルフの態度が変化していった。そしてついに彼は私がユリアナだということを信じてくれたのだった。
「ええ、そうなの。驚かせてはいけないと思って、本当のことを言えなかったのだけど、信じてくれてありがとう」
「それはやはり第三部隊の戦地での話などをされれば、信じざるをえませんよ。何しろ俺たちだけでしか知り得ない内容でしたし……それに、何よりエドモントさんが認めたのであれば、俺も認めざるを得ませんから」
ラルフはエドモントに視線を送る。
「それでは、今度はあなた達の話を聞かせてくれる」
私はエドモントとラルフを交互に見た。何しろ、私の知る世界から十年も経過しているのだ。漠然とした話はジェイクから聞いているけれども、当事者たちから詳しく話を聞かせてもらいたかった。
「ええ、もちろんですよ。それではやはりユリアナ様の消息が不明になった頃からの話をしたほうが良いでしょうね?」
エドモントが尋ねてくる。
「ええ、そうね。やはりそこから詳しく話を聞きたいたわ」
「分かりました。それではお話致しましょう」
彼はうなずくと、ポツリポツリと十年前のことを話し始めた――
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