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『平岩君へ
低体温症で、頭が働かなくなる前に、書いてしまうね。
私は今、氷に閉じ込められています。
最高のマンモスの標本を発見して、独断専行で突っ走って、氷漬けになっちゃいました。自業自得だね。
GPSも、クレバスの奥底に落ちちゃったから、発見される確率は五分五分かな。
もし、この文章が届くなら、読んでほしいな。
告白、嬉しかったです。
正直、あの時受けていれば良かったかなとも思いました。
愛情の証として、あなたが贈ってくれたリングは、死んでも放しません。
でも、もし、読んでくれたなら、私との婚約は解消してください。
そして、新しい、最高のパートナーを見つけてください。
そうすれば、私は心残りなく成仏できると思います。
本当に愛していました。 三山愛 』
平岩の心に、言葉では言い表せない、熱くて、冷たい、全ての感情がないまぜになった気持ちが、津波のように押し寄せてきた。ノートを千切れるほど握りしめた。涙が後から後から流れた。
参列者が、怪訝な顔で平岩を見る。
平岩は、そんなものはお構いなしに声を上げて泣いた。
形見の指輪を、手のひらで転がす。
「こんな形になっちゃったけど、また会えたね。嬉しいよ」
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