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当時7歳の布由は、いつものように田んぼに続く水路で遊んでいた。
棚田が広がる昔ながらの里山が、布由の住む集落だ。
そこに先祖が残してくれた畑が広がる。
春には玉ねぎにじゃが芋にタケノコを取り、夏にはトマトやピーマン、茄子を植え、秋にはサツマイモを掘った。冬には水菜、ほうれん草に大根白菜を収穫できる。家庭菜園というには大きく、畑と言うには小さな土地が渡辺家の畑だった。
畑の真ん中に、古くて大きな家があった。
母屋に隣接した納屋には、農具を収納している。
家から周囲の畑に水を流すため、山より水路を引いていた。
母屋より一段低い所を水路が通っている。畑に向かうために水路の上に丸太を半分に切ったものを4本並べ、小さな橋を渡していた。
澄み切った水路の水に、布由はたくさんの生き物を見つけた。
おたまじゃくしにメダカに、小さなカニ。
今日も両親が畑の手入れをしている間、布由は水路に潜り込み、4本橋の下で何か居ないかと探していた。
そこで、淡く緑色に光る卵を見つけたのだ。
(鶏の卵……? ううん、それよりは小さいな。一体、何の卵だろ?)
生き物が大好きだった布由は、嬉しくなった。
(緑だから亀の卵かな? もしかして、何かの鳥の卵が巣から落っこちたもの? 温めたら、孵るかな?)
期待に瞳が輝いた。
まだスマホも携帯も出回っていない時代。
調べる術は限られている。
(何が生まれても大切にしよう。友達になろう)
布由はダメ元で、それを温めてみることにした。
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