ケ・セラ・セラ(なるようになる)

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ケ・セラ・セラ(なるようになる)

 布由は卵を綿でくるみ、その上からさらにガーゼのハンカチでくるんで布団に入れた。既に暖かくなったので用済みになっていた湯たんぽを使って、暖かい温度をキープした。  寝る時には毎晩、自分が寝付くまで 「早く出ておいで。一緒に遊ぼう」  と語り掛けた。  普通の鶏の卵なら、それで孵ることはない。無理だったし、無駄だったはずだった。  布由が温め始めて三日目の朝、それは生まれた。 「え? ……何?」  ペパーミントグリーンの卵を割って現れたのは、片手に乗るサイズの、背中に羽の生えた人間だった。 「……誰?」  思わず聞いた。 「誰とは、酷いな。お前が温めて孵したのに」  生まれて間もないのに、背中に鳥の羽の生えた小さな和装の少年は布由に憮然として答えた。 「妖精? それとも天使?」 「そんな西洋かぶれのものではない。俺様は天狗だ」 「天狗……?」  言われてみたら、絵本や昔話に出てくる天狗に似ている。 「でも、鼻が低いね」 「ほっとけ」  少年は少し顔を赤くして、きまり悪そうに鼻を手で隠した。 「……お前の所為だぞ」  鼻を隠しながら言うので、鼻声で文句を言う。 「私の?」  布由は自分の鼻を指さした。 「温めた親の容姿に似るんだ。烏に温められてたら、鼻が嘴のように高くなってた筈なのに」 「へえ。あ、そだ」  烏と言われて思い出した。
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