キ・リ・ゲリ(笑う門には福来る)

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キ・リ・ゲリ(笑う門には福来る)

「天狗さんはどうして橋の下に落ちてたの?」 「カッコウにヤられたんだよ」 「カッコウ?」 「托卵って言ってな。カッコウは、他の鳥に卵の孵化を託すんだ。その時に、ご丁寧に巣の中の卵を一個棄てるんだ。それが俺だったという訳。転がって、この四本橋の下に来たんだ」 (托卵……)  布由は図鑑で読んだことがあった。  自分で温めずに、他の鳥に卵を託し、子育てまでしてもらうってやつだ。生存率を上げるための生き抜く術だと書いてあった。 「じゃあ、天狗さんの本当の親は烏なの?」 「厳密に言うと違う。いわゆる『転生』ってやつだ。天狗というのは不老であっても不死ではない。ぶっちゃけ死んだんだけど、山の神様の計らいでこの世に戻してもらったんだ。で、烏ってのは神様の使いでな、あいつらに俺の孵化を頼んだって訳」 「じゃあ……(托卵とあまり変わりないね)」  と布由は幼心に思った。 「卵の外側のことなのに、よく分かるのね」 「痩せても枯れても天狗だからな。神通力で、外のことは大抵分かってた。だけど、どうしても孵化には時間が必要だったんだ。お(めえ)に拾われて、本当に助かったよ。大事にしてくれて、ありがとな」  と、少年はにっこり笑って礼を言った。 (可愛い……)  小さな少年の微笑みは、なんとも愛らしく、つられて布由も笑った。
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