ウフドポンヌフ(橋の下の卵)

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ウフドポンヌフ(橋の下の卵)

 桜の木の下には死体が埋まっていると聞いたことあったけど、橋の下に卵が落ちているなんて知らなかった。  当時、鶏なんてどこの家でも飼っているものだった。  もちろん、ペットなどではない。  鶏は卵を産んでくれるし、客人が来る時には1羽ご馳走したものだ。今では残酷なことに思えるかもしれないが、頭のない鶏を逆さまに吊るして一晩かけて血抜きすることなど当たり前の風景で、それを怖いと思うよりも美味しそうと思うのが普通だった。そんな頃の話だ。  だから、パックの中ではなく地面の上にある卵を見つけても、別段珍しくもないことだった。  だが、拾った卵は鶏の卵のように白くなかった。もちろん、昨今流行(はやり)の赤玉とも違う。  ペパーミントグリーンに黒の斑模様は、チョコミントのアイスを連想させた。  しかも、なんだか光っているように見える。  珍しい卵だから、光って見えたのかもしれない。  渡辺布由は、それを大切に持ち帰った。
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