闇への招待状②

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「この懐中時計が気になるのかい?」 「あ、はい…とても素敵だなと思って…」  年代物の懐中時計は高価な物だ。  欲しいと思った奏多だったが今の自分に手の出せる金額ではなかった。  そんな奏多の感情が高倉には切ない程に伝わって来た。  棚から懐中時計を取ると小さいのが二つと一回り大きな懐中時計を奏多に差し出した。 「気に入ったのなら三つとも蒼井君にあげよう」 「えっ⁉︎」  嬉しい反面、あまりに高価な物に奏多はさすがに首を横に振った。 「こんな高価なものっ!ただで貰うなうなんて」  奏多は遠慮して受け取ろうとしないので高倉は、それなら奏多に今度とあるパーティーがあり、主催者が風景画を好んでいる。その主催者に風景画をプレゼントしたいと思っていて、その風景画を奏多に描いて欲しいと依頼したのだ。  懐中時計はその風景画の報酬として受け取ってほしいと。 「あ、ありがとうございます」  奏多は高倉の思いやりに感謝して頭を下げた。
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