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 黎は雨が嫌いだった。嫌な事がある時はいつも雨が降っていた気がした。逆に麻人は嫌な事を全てを洗い流してくれる気がすると言って雨が好きだと言っていた。  その日は朝から真っ暗で土砂降りの雨が降っていた。傘を差さず濡れるのも構わず黎はある場所へと向かっていた。辿り着いた場所はひっそりと山の中にある墓場だった。墓場と言っても山の中の敷地に手入れもされていない大きな石が置いてあるだけ。他人が見ればこれが墓だとは気付かないだろう。  石の前に立ち黎は途中で咲いていた小さな花を手向け手を合わせて目を閉じる。雨はさらに強さを増し雷鳴が響いていた。  四月下旬とはいえ、雨に濡れると流石に寒気がして暖かいシャワーを浴びる。大きめのシャツ一枚のラフな格好になり、冷蔵庫から水を取り出し一口飲む。髪も乾かさずソファに座り机に置いてある資料に目を通す。一通り目を通し終えると資料を置きソファに横になるが相変わらずの土砂降りの雨に雷の音に心が憂鬱になる。ソファに寝転がっているとリビングの扉が開き、麻人と淳が入ってきた。時刻は15時。 「お帰り、早いじゃん」 「ああ。今日はこんな天気だし誰も来ないだろう。早めに店を閉めてきた」 「ふーん」  麻人はスーツを脱ぎ部屋着に着替えてきた。ソファに座り黎の格好に目が行く。 「お前はまたそんな格好で…」 「だって、楽だし…」  淳もスーツの上着を脱ぎ、夕食の支度をしにキッチンへと向かった。この森の中の大きな家に三人で住んでいる。家事全般は淳の担当だった。    
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