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出会い
麻人は土砂降りの雨の日に暗闇に蠢く物体を見つけた。気になった麻人は車を運転していた淳に車を止めさせた。濡れるのも構わず車から降り、その物体に近づく。淳も直ぐに車から降り麻人に傘を差し、近づいてみるとそれは人だった。それもまだ幼い子供だ。ボロボロの布切れを羽織っただけの格好で身体は寒さで震えている。麻人は自分のスーツが汚れるのも構わずその子供を抱き上げ車に乗せた。淳は何も言わず持っていたハンカチを麻人に差し出し気休め程度に顔を拭く。とても綺麗な顔立ちの子供だった。だがその身体は痩せ細っていた。
急いで家に連れ帰り、立ち上がる力も無いのかグッタリしている子供を抱えて一緒に温かい風呂に入る。
ざっと温まり風呂から上がり身体を拭き、子供には大き過ぎる自分のシャツをとりあえず着せた。
子供を椅子に座らせ、淳が簡単に作った温かいスープを食べさす。初めは躊躇していた子供だったが一口食べるとガツガツと食べ始め、あっという間に完食した。
「君、名前は?」
麻人が尋ねると子供は首を傾げる。
「俺は倉田麻人。君の名前は?」
再び麻人が尋ねるが子供はまた首を傾げる。そりて首を横に振る。
「………ない、名前なんて…」
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