出会い

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 翌日、友人の刑事の安藤に連絡を入れ、黎の事を調べてもらう事にした。詳しい事が分かるまでは麻人の家で面倒を見る事になった。  医師にも黎の状態を診察してもらい、極度の栄養失調と言われしばらくは安静となった。黎は自分の誕生日も分からず、おおよそ12歳位だろう思われる。医師の話を聞き、この子供は何処から来てどの様に育って来たのだろう。  一ヶ月後、安藤が麻人の家を訪れた。  差し出された資料に目を通した麻人は驚愕する。 「人身売買…」 「ああ。この日本でもあまり知られてはいないが日本でも人身売買が行われている」 「黎はその被害者というわけか…」 「ああ。人身売買を行なっていた組織が検挙された。そのリストの中にその子の顔写真が有った。他にも数十人いたがもう海外に売られてしまっているのか皆行方は分からない。行方不明届けから他の子は身元が分かったがその子供だけが分からなかった」 「届出が無いのか…?」 「ああ。その子だけ行方不明の捜索願いは出ていない」    何処の誰かも分からない子供。引き取り手も居ない。そうなると施設に入るしかない子供を麻人は自分が引き取る事に決めた。出会ったばかりのこの子供を何故か放っておく事が出来なかった。手続きには時間が掛かったが友人の弁護士である御手洗の協力を得て子供を引き取る事になった。  
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