最寄り駅は谷町線 四天王寺前夕陽ヶ丘駅

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   出口が見えてきた。  体感では長く感じたが、実際は距離的にも時間的にも短いものだった。 ◇◇  四天王寺前夕陽ヶ丘駅の出口から陽光溢れる地上へと出た私は、現在地を確認するため周りを見渡した。  どうやら谷町筋から一本中に入った道に出たようだ。幅員や建物から鑑みて、昔からある旧街道のようだった。  大阪では、南北に走る道路には「(すじ)」、東西に走る道路には「(とおり)」という名前が付けられている。そのため、自分が今いる道路が「○○筋」なら、南北方向に進んでいることが分かる。  ちなみに、大阪でよく聞く「筋」と言えば、西から四ツ橋筋、御堂筋、堺筋、松屋町筋、谷町筋ではないだろうか。「通」だと、北から本町通、中央大通、長堀通(ながほりどおり)千日前通(せんにちまえどおり)が中心部を通る道路となっている。 ◇◇  ふと、パンのいい匂いが漂ってきた。  出口の前にお洒落でおいしそうなパン屋さんがある。腕時計を見ると午後1時前を指しており、間もなく昼休憩が終わる時間だったが、お客さんは多い。  焼きたてのパンの匂いと途絶えない客足が、美味しいパン屋さんだと教えてくれる。  お腹が空いていたので立ち寄るかすごく迷ったが、先に用事を済ませることにした。  帰りにパンを買って帰るのもいいな。  そんなことを思いながらマップに目的地を入れた。  旧街道の両側には、昔ながらの家とお洒落なお店、マンションなどが混在して建っており、なぜか懐かしい感じがする道だった。自転車で通り過ぎる人や歩いている人はいるが、平日昼間の人通りはそこまで多くなく、たくさんの車が行き交う谷町筋から一つ中に入っただけなのに、ゆったりとした時間が流れている。  マップで経路を確認しながら、携帯片手に右に左にせわしなく目を向け、1軒1軒どんなお店があるのか歩きながら見ていく。  知らない道を通るといろんな発見があり、ワクワクして楽しい。  空は雲一つないピーカン晴れで、午後1時の太陽は高く、4月初旬とは思えないくらい気温が上がってきた。少し歩いただけでも、制服のジャケットを着ていると汗ばんでくる。  リュックから水筒を取り出して、お茶を一口飲んだ。  またリュックに戻すのは面倒だし、このまま手に持っていこう。  水筒ケースの肩紐は二重になっているため長さも丁度よく、右手で持っても邪魔にならない。  汗ばむくらいの暑さと陽射しの強さに、日傘を差している人もいる。私も日焼け止めを買わなければと思いながら、マップを確認した。  そろそろ目的地に着くようだ。
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