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スーパーヒーロー
バッシャァァン
バケツが勢いよく私に降りかかる。
「あっ ごめ~ん、気づかなかった・・・ww」
そう言っている顔は、演技をしているようだった。
濡れて重くなった制服。
「wwwおもろ」
「え、それなw 写真撮ってクラスラインに送ろ!」
「ーーちょっと待って。先生こっち来るかも」
「ヤバ。早く帰ろっww」
「じゃーね、水被り女www」
「・・・」
クラスメイト達が急いで走る。その間に、足元まで濡れてしまっている自分がいた。
「床、拭かなくちゃ・・・」
近くの教室から雑巾を取り、乾拭きで拭いていく。
拭いたはいいものの、服から零れる水がまた床を濡らす。
「これは風邪引くな」
でもそしたら、学校に行かなくて済む・・・?
「あれ、なんでここにお前が」
「えっ・・・と」
上を見上げると、隣のクラスの人の顔。結構イケメンとかで有名だったような・・・
そうだ、一年の時同じクラスだった。
「ちょ、なんでこんなに服濡れてんの・・・」
イケメンが私に駆け寄る。
「気にしないでいいーークシュン」
「いや、ここで気にしない奴いないだろ」
そうすると、イケメンはバッグから何かを取り出した。眼鏡が濡れているせいか、よく見えない。
「ほら、ジャージ。」
「あ。その前に、俺のブレザー掛けろ」
そう言って彼のブレザーを私に掛けた。そのブレザーから、温もりが伝わる。
「でもあなたのブレザーが濡れちゃう・・・」
「いーの。こんな姿でほっとけないだろ?」
イケメンが私の目線に合うようにしゃがむ。
(まつ毛、綺麗)
イケメンと言われるのが分かる。
「じゃあさ、なんでこんなに濡れてるか教えてくんね?」
「・・・っ」
( 言ったらからかわれるんじゃないかな )
昔、同じような経験がある。そのせいであまり人には教えたくなかった。
「怖がらないでよ。俺、お前の味方だからさ」
「あと、掃除手伝うし」
み、かた・・・
私の仲間。
私に、味方が出来るのかな・・・?
「実は・・・」
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「私ね、クラスで虐められてんの」
「・・・!」
「そんな反応になるよね。私もよく理由がわかんなくて・・・」
私はただ、普通に生活してるつもりだったのに。普通に生活したかっただけなのに。
「しかも私、友達がいないんだよね。だから誰にも相談できないし」
「ホント、なんでなんだろ」
なんで私は、毎回こういう目に遭うのだろう。
「じゃあさ、」
イケメンが床から目を離す。
私の方を真っ直ぐ見つめる。
「俺がお前の友達になる」
「そしてお前を護ってやる」
「アハッ・・・何言ってんの」
正直に言うと嬉しい。
だけど、信用が私にはまだ半分くらいしかない。
(都合が良すぎるんじゃ)
「でも嬉しい。友達として、よろしくね」
「おう!」
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あれから数日後。
「ねぇ、お金貸してくんない? 一万円」
「今うちら金無くて困ってるんだよねー」
「あんたなら・・・あるよね??」
「ッ...」
私の家は貧乏だ。学校行けるので精一杯なのに・・・!
( 誰か、助けて!! )
「おい。そこで何してんの?」
ガシッと女子たちは誰かの手に肩を掴まれていた。
「ヒィ......」
「何してんのって聞いてんだけど」
その顔は鬼のように怖かった。
「・・・行こ」
クラスメイトが去っていく中、手を差し伸べられた。
「大丈夫か?」
「えっ・・・なんで」
「言っただろ! 俺はお前の味方だって」
後ろから光が差しているように見えて。
( 本当にこの人は味方なんだな )
「あり、がと・・・」
「また何かあったら俺に言えよ? そしたら助けてやるから」
「・・・ッ ! !」
涙が溢れた。頬を伝う。
「どうした?」
顔が覗かれる。やっぱり顔が綺麗。
「こんなに優しくされたの初めて、で・・・ッ」
「皆、見て見ぬフリだったからっ・・・!!」
なんで、こんなに私に優しいの?
「当たり前だろ。ずっと護ってやるから・・・♡♡」
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アイツは絶対気づかない。
俺がクラスメイトを虐めるよう仕組んで、
タイミングを見計らって助けて、
アイツに良い慰めの言葉を言って・・・!
『私ね、クラスで虐められてんの』
『ホント、なんでなんだろ』
ごめんな。それは、俺のせい。
でもそういう考えにさせたのは、お前のせいだろ・・・♡
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『私の、好きなタイプ・・・?』
あれは高一の時。
ふいにお前とクラスメイトの会話が聞こえた。
『教えてよ~』
『う~ん・・・』
『 私が嫌な目に遭った時、助けてくれる人。かな 』
『・・・! スーパーヒーロー的な!?』
『ま、まぁね』
その時、俺はこう思ったんだ。
どうやったら嫌な目を作れるんだろう って・・・♡
この学校は平和だ。虐めなど殆どというほどない。
じゃあ、虐めるよう仕組んでそれを俺が助ければ・・・!
「あの」
そしたら
「俺と、付き合ってください。一生お前を護りたい」
きっと
「...//」
「私でよければ・・・! よ、よろしくね・・・・・・」
俺は、スーパーヒーローになれる。
「俺の、俺だけの・・・♡♡」
「お前の味方は俺だけだからな♡」
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