ヤ ン デ レ 集

初心

　「おい」

「な、何？」

「俺以外の男の連絡先、全部消せ」

「...う、うん。ほら、もう消してるよ」

「ならいい」

そう言って彼は去っていく。

(はぁ・・・怖かった・・・・・・)

今では愛が恐怖に変わって見えるのは、何故だろう？

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　私が彼氏と付き合ったのは二ヵ月前くらい。

あの頃の私達は初心だった。とてもピュアな付き合いだったなと改めて思う。

私は一つ一つの恋人の仕草で照れている彼氏を見るのが好きだったし、たまに男を見せてくるところも好きだった。周りにも『お似合いのカップル』と言われちょっと恥ずかしかった。

　なのに、いつからだろう。

「なぁ、学校で俺以外の男と話さないで」

「俺とずっと一緒にいてくれる？」

こんな言葉たちを彼氏が言ってきたのは。

「ねぇ、最近おかしいよ・・・！ 大丈夫？」

「早く答えろよ」

「...わかった」

徐々に徐々にエスカレートしていく彼のルール。

それに反してだんだんすり減っていく私の精神。

もうこれは、愛なのか？

　いつからだろう、私にとって彼の愛は　ルール(束縛)　に変わり恐怖心だと感じてしまったのは。

(友達に相談してみよう)

女の子だし。大丈夫だと、おも、う・・・

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　「だから最近遊べてないのか～ 私二人のこと応援してたのに」

「うん・・・」

「彼氏にさ、『もうやめて』的なこと言った？」

「いやぁ・・・・・・ね」

そんなこと言ったら、私達はどうなってしまうのだろう。もっともっと激しくなってしまうかもーー

「じゃあさ、こっそり遊ぼうよ。言わなければバレないんじゃない？」

(　大丈夫、かな　)

嫌な想像しか頭に入らない。

「喋んなきゃバレないよ！ たまにはパーッと遊んで、ストレス減らそ！！ 二人のことはその日ちゃーんと聞くから」

確かに。たまには息抜き、しなきゃ。

「わかった、いいよ」

「やったー！ じゃあ場所とかは紙に書いて後で渡すね！！」

スマホだと彼に見られちゃうかもしれないから。優しいな、私の友達は。

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　『もう二人とも、別れちゃえば？ 束縛彼氏とか嫌でしょ...！』

昨日遊んだ時、友達に言われた言葉。

(そうだよ、私はこんなルールに縛られたくない)

「ねぇ」

「・・・なんだ...？」

「私達、別れよう」

「・・・は？」

いじっていたスマホから、私へと目を向ける。

「何言ってんだ？」

スマホを置き、私にすがりつく。

「もしかして俺以外に好きな人でも出来たのか？」

「ちが、」

「俺は世界一お前のことが好きな自信がある」

ダメだ。彼の黒い瞳に私は逆らえない。

「もう、耐えられないの」

「？」

「あなたのルール(束縛)にｯ...耐えられないの......！」

「・・・しょうがな」

「誰かに取られるのが嫌だったから」

「でしょ？」

「・・・そこまでわかるなら、言えるよな？」

「『　お前(私)　には　俺(彼氏)　が必要だ』って」

逃げたい。私がこの状況を作ってしまったけど・・・

どんどん、彼氏のペースに吞まれてく。

「　ｯ...やめて......　」

「...え」

「　私は、あなたなんか必要じゃない　」

「・・・そっか。じゃあもういいや」

やったｯ...！ 私達は別れーー

「俺への愛、足りてなかったか♡」

「...え？」

なんでそうなるの！？ 愛が重すぎるから、こんなことになったのに！！

なんで私のこと、諦めてくれないの・・・！？

「もう色んな奴らに合わせなきゃいいよな」

「漫画やアニメなんて俺の家に行けばいくらでもあるから」

「もう誰とも連絡すんな」

「部屋から出るなよ。出るのはデートのみだ」

「学校は俺がなんとかしとくからさ」

やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて・・・・・・！！

昔の頃に戻ってよ...

「しかも昨日遊んじゃってさ、バレバレなんだよ」

あ～あ・・・ もう、終わりだ。

「私達、最初は　初心　だったじゃん...！！」

「それは最初、だろ？」

顔がどんどん近づいてkーー

「　愛してるよ　」