10人が本棚に入れています
本棚に追加
scene 14
郵便受けに差し込まれた「エド新聞」を引き抜きざまに、私は階段をのぼる。自宅に戻り、湯を沸かした。抽出式のコーヒーを淹れ、居室へ運んだ。飲みつつ、新聞を読む。興味を覚えるような記事はなかった。新聞を片づけてから、遊びの支度を始める。専用ケースの蓋を外し、ゲーム機を取り出した。妖怪御殿の攻防をセットし、電源を「ON」にした。
最初に[企画制作:闇塚堂]のクレジットが出る。それが消えると、おもむろにタイトル画面が現れる。妖怪御殿の影絵を背景にして、秘密結社〔P〕の改造戦士たち(の全身画像)が複数表示される。この際に流れる「菊池俊輔調の主題曲」がなかなか良い。コントローラーで「ゲームさいかい」を選択し、決定ボタンを押す。
第一部隊の六人は[さくせんしつ]を出て、大魔宮〔妖怪御殿〕に突入した。地上1階である。長い長い迷宮探索の旅。ここが冒険のスタート地点である。各ダンジョンは「20マス×20マスの正方形」で構成されている。本格派は方眼紙を用意し、手書きで迷宮の地図を作ることに、楽しみや喜びを感じるらしい。だが私は、そういう細かい作業が億劫と云うか、苦手である。
ゆえに「オートマッピング」を使わせてもらう。これは、ダンジョンの中を歩き回るだけで、自動的に地図が作成される仕掛けである。地図書きの煩わしさから解放されて、モンスターバトルとキャラクターメイキングに集中、専念できるというわけだ。ものぐさプレイヤー(私)のために用意された便利機能である。
地上1階は「遊園地の幽霊屋敷風」のデザインになっていた。薄暗い通路を直進し、ドア、ならぬ、襖を開けると、画面に[そうぐう]の四文字が表示された。直後、妖怪の群れが所狭しと出現し、音楽も移動のそれから戦闘のそれに変わる。
我が部隊、最初の敵は[とうふこぞう(5)]と[ばけぞうり(5)]の計10体だった。いわゆるザコキャラだが「黄金期の柳柊ニと石原豪人の合作」を連想させる画像は、鬼気迫る完成度であり、子供が見たら泣くかも知れない。
初陣である。この勝負に限っては「にげる」ということは考えられない。前衛の卜伝、義輝、信綱の三人に「こうげき」を指示。後衛の勘助、武蔵、又右衛門の三人は「ぼうぎょ」を選択する。と云うより、それ以外にやることがないのが実状である。飛び道具(遠距離武器)を入手、装備するまでは、我慢と忍耐が続く。
第1ターン。卜伝がとうふこぞうAを斬り伏せた。義輝と信綱が、二人がかりでとうふこぞうBを斬り伏せた。敵の逆襲。とうふこぞうC、同D、同Eの直接攻撃とばけぞうりA~Eの投石攻撃を浴びるが、損害は軽かった。第3ターンを終えたところで、敵の数は2体に減っていた。ばけぞうりDを卜伝が、同Eを信綱がやっつけた。勝利を称える音楽とともに[つづら]が表示される。
最初のコメントを投稿しよう!