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scene 16
居室へコーヒーを運んだ。飲みつつ、私は[こうばいぶ]の画面を開いた。新たなサイボーグ戦士(第一候補:くも怪人、第二候補:うつぼ怪人)を誕生させたいのはやまやまなれど、その前に後衛三人(勘助、武蔵、又右衛門)の武装を整えることにした。戦闘の際、毎回「ぼうぎょ」ではどうにもならない。
コスト1000の「スリングショット」を三丁買った。その威力は飛び道具の中でも最弱に属するが、命中率が高いという利点がある。敵一体に集中射撃を浴びせれば、それなりの成果をあげてくれるだろう。残り2000で「ヘルメット」を二つ買った。こちらは前衛用だ。義輝と信綱にかぶらせた。
☖塚原卜伝〔ばった怪人〕装備:バトルナイフとスモールシールド
☖足利義輝〔コンバットマンB〕装備:バトルナイフ、ヘルメット、スモールシールド
☖上泉信綱〔同C〕装備:バトルナイフ、ヘルメット、スモールシールド
☗山本勘助〔同D〕装備:スリングショット
☗宮本武蔵〔同E〕装備:スリングショット
☗荒木又右衛門〔同F〕装備:スリングショット
スリングショットの試し射ちを兼ねて〔妖怪御殿〕の地上1階へ再びおもむく。回復アイテムを持っていないので、深入りはできない。慎重に駒を進める。三つ目の障子を開けると、そこに魔群が待ち伏せていた。バトルが開始される。敵の陣容は[こおに(3)][とうふこぞう(3)][あぶらずまし(2)]の計八体。こちらとしては、頭数を減らしたい。第1ターン。全ての攻撃力をこおにA~Cにぶつける。卜伝が同Aを斬り伏せた。義輝と信綱が同Bを斬り伏せた。勘助、武蔵、又右衛門が同Cを射止めた。
敵の反撃。とうふこぞうA~Cにはほとんどダメージを受けなかったが、あぶらずましAとBが「ひのいき(火の息)」を吹きつけてきた。これは、かなり痛い。全メンバーがHPを削り取られた。だが、逃走という選択を私は考えなかった。
第2ターン。卜伝と義輝が、あぶらずましAを斬り伏せた。同Bに信綱が斬りつけ、勘助、武蔵、又右衛門の連続狙撃でトドメを刺す。断末魔の効果音とともに盛大な血飛沫が四方にばら撒かれ、あぶらずまし二体が闇の奥へ消え去る。
第一部隊をアジトに帰還させた私は、ここまでの冒険記録を保存した。ゲーム機の電源を切り、アダプタをコンセントから引き抜いた。画面を[ゲーム]から[テレビ]に切り替えると、変装中の源シオール(扮する主人公)が現れた。人気ドラマ『ジョタン』の再放送であった。さすがはアンドロギュヌス(※本人談)である。まったくうまく化けるものだ。仮に美少女俳優が同様の芝居を演ったとしても、こう見事にはゆくまい。シオールゆえに可能となる迫真力であり、説得力なのである。
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