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16
夜明け前―――…
久しぶりに見た悪夢で目が覚めた。
一瞬、ここは何処だ?と戸惑って、薄明かりのこの部屋を見回し、横向きに寝ていたオレの背後から、聞こえる寝息。
視界に入った腕まくら。
絢斗の気配を背後で感じた。
体の向きを変えて絢斗を薄明かりの中で見つめた。
絢斗もこちらを向いて眠っていた。
目を凝らして絢斗の顔を見つめた。
睫毛長いな…。
鼻…高い…。
この唇でキスしたんだなぁ…。
そっと唇を指で触れた。
初めては絢斗が良かったなぁ…。
あの日 ――…
無理やり犯されたのにも拘わらず痛みよりも快楽を拾い、浅ましくも絶頂を迎えたのは、媚薬のせいだと思いたい。
それでも、男に犯されて男が怖いとか思わなかった。
そのあと2人の男と付き合ってたし、ゲイだと自覚したしなぁ…。
あの日から母さんがオレに笑いかけてくれなくなった。
いや、最初はオレに気を使ってくれてたと思う。
『煌太は悪くない』と言ってくれてたし。
だけど、
今思うと母さんも母親としてより、女としてのプライドがズタズタだったんだろうな……。
徐々に雰囲気が悪くなっていった。
居心地の悪い思いをしながら過ごすのが苦痛だった。
母さんに声を掛けて、応えは返ってきても、表情が俺を拒絶してた。
お前さえ居なければとでも言うような表情を時々見え隠れしてた。
母さんは段々と家を開けるようになった。母さんが家に居る時は、オレは部屋から出なくなった。
男に犯された話も、母さんとの事も誰にも話はしなかった。
今もする気はない。
絢斗だけが救いだった。
絢斗の前ではバカな事して笑っていられた。
でも、
中2になって暫くしてから、絢斗に直接聞いた訳ではなかったけど、彼女ができたらしくて、かなりショックだった。
絢斗に彼女がいるなら、一緒に居られないと思って避けるようになったし…。
イヤな目で母さんに見られて、その態度が嫌で、自暴自棄になっていったし。
母さんが居ない夜は、なんとなく外を彷徨っていた ――――…。
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