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夜明け前―――… 久しぶりに見た悪夢で目が覚めた。 一瞬、ここは何処だ?と戸惑って、薄明かりのこの部屋を見回し、横向きに寝ていたオレの背後から、聞こえる寝息。 視界に入った腕まくら。 絢斗の気配を背後で感じた。 体の向きを変えて絢斗を薄明かりの中で見つめた。 絢斗もこちらを向いて眠っていた。 目を凝らして絢斗の顔を見つめた。 睫毛長いな…。 鼻…高い…。 この唇でキスしたんだなぁ…。 そっと唇を指で触れた。 初めては絢斗が良かったなぁ…。 あの日 ――… 無理やり犯されたのにも拘わらず痛みよりも快楽を拾い、浅ましくも絶頂を迎えたのは、媚薬のせいだと思いたい。 それでも、男に犯されて男が怖いとか思わなかった。 そのあと2人の男と付き合ってたし、ゲイだと自覚したしなぁ…。 あの日から母さんがオレに笑いかけてくれなくなった。 いや、最初はオレに気を使ってくれてたと思う。 『煌太は悪くない』と言ってくれてたし。 だけど、 今思うと母さんも母親としてより、女としてのプライドがズタズタだったんだろうな……。 徐々に雰囲気が悪くなっていった。 居心地の悪い思いをしながら過ごすのが苦痛だった。 母さんに声を掛けて、応えは返ってきても、表情が俺を拒絶してた。 お前さえ居なければとでも言うような表情を時々見え隠れしてた。 母さんは段々と家を開けるようになった。母さんが家に居る時は、オレは部屋から出なくなった。 男に犯された話も、母さんとの事も誰にも話はしなかった。 今もする気はない。 絢斗だけが救いだった。 絢斗の前ではバカな事して笑っていられた。 でも、 中2になって暫くしてから、絢斗に直接聞いた訳ではなかったけど、彼女ができたらしくて、かなりショックだった。 絢斗に彼女がいるなら、一緒に居られないと思って避けるようになったし…。 イヤな目で母さんに見られて、その態度が嫌で、自暴自棄になっていったし。 母さんが居ない夜は、なんとなく外を彷徨っていた ――――…。
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