105人が本棚に入れています
本棚に追加
/697ページ
「……せらふぃむ……」
「日が暮れる前には迎えに来ると言っていた。……気晴らしに散歩にでも行くか?」
「うん!!」
満面の笑みを浮かべる見習い神。
最初は手を繋いで散歩へ向かおうとしたが、身長差でそれが難しく、見習い神を腕に抱えて散歩に向かうことにした。
身長の低い臣下を道中で見かけたならば同行させようと、庭へと続く通路をゆっくりと歩く。
見習い神の気配で何かを察したか、あまり近付いてくる臣下はいなかった。見習い神を抱えたまま、通路を歩く。
「おしろ、おおきいねー」
「ああ。ここは、魔王城だ」
「まおーじょー?」
魔界には、魔王城と呼ばれる建物がある。天界にある建物が白を基調としているものが多いのに対し、魔界にある建物は、黒系のものが多い。庭へと出るまでに通った廊下の壁も漆黒だ。
ただ、魔界は地上には劣らぬ程の自然溢れる場所だ。
現在魔王はいない。城は俺も利用しているが、基本的には魔王代理の黒龍が筆頭となり城の管理をしてくれている。
「わぁ……きれいなおはな」
「あのあたり一帯には薔薇を植えていたな。……行くか?」
「うん!!」
薔薇を眺めながら進んだその通路の先には、少し開けた場所がある。結界に守られたここでなら、魔物も近寄れまい。
俺は、腕に抱えていた見習い神をゆっくりと地面におろした。
「走るでないぞ。薔薇にはトゲがある。触らぬようにな」
「はーい」
注意事項を告げ、見習い神の好きなように歩かせて、その横を歩く。
「……そういえば、お前……名は?」
「つきかげー!!」
「月影?」
「うん!! かいろす・むーんらいと」
「……どっちだ……」
カイロス……『時刻』……もしくは『機会』……か?
ムーンライトは月の光……。
まあ、月影と呼べばいいか。
最初のコメントを投稿しよう!