◆大学一年の冬から大学二年の夏

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「泣くなよ、俺めっちゃ嬉しいのに」 「だってずっと君津先輩の気持ち分かっていながらずっと黙ってて、挙げ句の果てに好きだなんておこがましい…」 「俺だって早く告白してたら、お前が苦しまなくてよかったのにごめんな」 ぎゅ、と力強く抱きしめた後顔を見合わせると二人とも涙まみれ。何だかおかしくなって俺が笑うと、船橋も笑い始める。そのうち声を出して二人大笑い。思い切り笑ったらすっきりした。 「あーあ。もうやめやめ!せっかくお互いの気持ちを分かり合ったんだしハッピーにいこう」 俺がそう言うと、船橋も大きく頷いた。そして俺の大好きな笑顔を見せる。俺はまたたまらなくなって、思わず聞いた。 「船橋、キスしていい?」 その答えを待たず、俺はその顔を両手で包み込んで、軽くその唇にキスをした。柔らかい感触に思わず息を呑みそうになる。昨夜、熱を出して寝ていた船橋にキスしなくてよかった。今こうして初めてのキスを甘く感じることが出来たのだから。 俺がゆっくりと唇を離すと、真っ赤になった船橋の顔。 「先輩ずるいです」 そう言うと今度は船橋からキスしてきた。ゆっくりと、甘えるように。…って、まてまて! 唇を離して俺は思わず叫んだ。 「おっ、お前っ、舌…!」 なんと船橋は舌を入れてきた。まさかの行動に今度は俺が真っ赤になってしまった。 「だってもっと甘えたいって思ったから」 堂々と言葉にした船橋。さっきまで泣いていた可愛いウサギが急に獲物を狙うライオンになったみたいだ。 「…だめでした?」 「そんなわけないだろ」 ここは歳上の余裕を見せなくては、と俺は咳払いして船橋の頭を撫でた。 それからしばらくして、天体観測リベンジはようやく果たすことができた。 秋が近づいていたから、少し寒かったけど体を寄せ合って望遠鏡を覗き込む。 「あったかい」 「船橋が体温高いからな」 「小学生みたいじゃないですか」 高校生の時に、成田の隣で嬉しそうに星を数えていた船橋は俺の隣で楽しそうに笑顔を見せる。 きっとこれからも四季の星空を見て、二人で星を数えていくのだろう。 俺はそっと船橋の手を握りながらそう願っていた。
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