◆大学二年の冬

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二人でシャワーをしながら、俺はまさかあんなに気持ちいいなんて、と呟いた。 「じゃあ、今後も君津先輩を抱いてもいい?」 耳元でそう囁かれては頷くしかない。 「だけど俺だって男だからな。挿れたくなることもあるかも」 それを聞いて船橋は少し笑う。 「どうかなあ、あんなに気持ち良さそうにしていたからもう戻れないんじゃない?」 うっと言葉に詰まってしまった。実際、確かに気持ちよかったし、何より攻めてくる船橋がたまらなくて。可愛い後輩のはずなのに、いつのまにかこの年下の恋人は俺をリードしていく。 結局、船橋は俺の部屋に泊まり、翌朝一緒に大学へ向かった。俺のパーカーを貸していたのだが、大学に着いた途端、松戸にいきなり言われた。 「あれその服、啓介のお気に入りと同じじゃん」 紺色に白でロゴの入っているパーカーはノーブランドだけど、真ん中に星のイラストが散りばめられていて気に入っている。それを船橋が着ていることに気づいた松戸。すると、俺が答える前に船橋が答えた。 「昨日飲み過ぎちゃって、君津先輩の家に泊まらせてもらったんですよ。それで、服を借りて来たんです」 「へぇ。お泊まりねぇ…?まあ仲良しで何より」 ニマニマ笑いながら松戸は俺の肩を叩き、先に行ってしまった。後に残された俺と船橋はお互いに顔を見合わせる。 「バレてると思う?」 「…そんな気がしますね。でも僕は先輩が恋人なんだって、言いふらしたいです。それと、君津先輩。僕も啓介さんて、呼んでいい?」 そう言うと船橋はそっと手を握ってきた。普段はそんなことしないのに。もしかしたら名前を呼んでいた松戸に妬いたのだろうか。 「当たり前だろ。じゃ俺も正史って呼ぶ」 ギュッと繋いだ手を強く握り返す。 「…手、解かないんですか?」 「俺だってお前が後輩じゃなくて恋人なんだって、見せびらかしたいんだよ」 俺が笑うと、船橋は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに大きな笑顔になった。 そう、俺は船橋のこの笑顔に初めから惹かれていたんだ。ようやく手に入れたんだから隠すなんてそんなことしたくない。 そういえば、と腕時計を見ると結構な時間になっている。 「もうこんな時間だ、急がないと」 「はい!」 俺らは手を繋いだまま、講義室へと走って向かった。 【了】
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