◆大学一年の冬から大学二年の夏

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◆大学一年の冬から大学二年の夏

大学生になってから何が変わったかというと、一人暮らしを始めたことと、バイトを始めたこと。 そして黒かった髪をブリーチしてグレーに変えた。高校からの友人で天文部員でもあった松戸に大学デビューかよ、と笑われたけど、松戸だって金髪にしてたからお互い様だ。 「啓介、今日はなんかご機嫌じゃね?」 あと一コマで授業が終わる頃に、講義室で松戸に話しかけられた。どうやら俺が普段より浮き足だってることが分かったらしい。 「そう?別に何もないよ。強いて言えば、このあと高校の後輩の勉強見てやるくらい」 「なんだあ、ニヤニヤしてるから俺に内緒でいい相手ができたのかと」 ニヤニヤしてたのか、それはまずい。俺が思わず口元を塞ぐと松戸はニヤッとする。 「ははーん、さてはお気に入りの子だな。せいぜい襲わない様に気をつけろよ」 「そっ、そんなんじゃないよ!」 ついムキになった俺に松戸はハイハイ、と肩をすくめた。 卒業式後、船橋は舞浜大の受験を決意したらしくいまは追い込み次期だ。受験勉強で分からないことがあれば連絡しろよ、と言ってみたところ、最近は割と頻繁に連絡が入るようになった。船橋の家の自室に入るのは、何度行っても緊張する。 「あー!そういうことか!ようやく分かった!」 なかなか解けなかった問題をヒントを出しつつ教えると、船橋は自分で回答を導き正解した。元々賢い子だから、俺が教えるまでもない気がするんだけど。 「君津先輩のおかげです!ありがとうございます」 嬉しそうな船橋の笑顔に、こちらも釣られてしまう。来週はいよいよ受験だ。船橋が舞浜大に入学するかしないかで、俺のキャンパスライフも決まってしまう。 「そうだ、これ」 休憩中にコーヒーを飲みながらポケットに入れていたお守りを船橋に渡す。ベタなお守りだけど、受け取ってくれるかな。 「…あ!これ」 船橋はお守りを見るなら立ち上がって自分の鞄を漁り始め、中から何かを取り出し俺に見せる。 掌の中にあったのは、全く同じお守りだ。 「あちゃかぶったかー。じゃあいらないなあ」 「えっ!何言ってんですかもらいますよ」 お守りを二つ掌にのせる。 「先輩のおかげで二倍のご加護になりましたから、絶対合格しますね!」 そう笑った船橋は、その宣言通り見事合格。舞浜大に入学し、俺も所属している天文学サークルに入った。まるで高校生にもどったかのようで、胸が甘酸っぱくときめいてしまった。
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