◆大学一年の冬から大学二年の夏

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天文学サークルでも夏場には天体観測の合宿が行われていた。昨年はいい天気でよく星も見えたのに、今年は… 「雨だね」 当日、警報予想が出るほどの大雨。部員はみんながっかりしていて、当然俺も船橋も肩を落とした。特に船橋は大学に入ってから初めての合宿だから、楽しみにしていたに違いない。 窓の外を恨めしげに見ている船橋。あまりに落胆しているので、俺はあることを思いついて、船橋に近づいた。 「なあ、二人で行くか、天体観測」 「えっ?」 車は親父のを借りて俺が運転すればいいし、近場のキャンプ場くらいしか行けないけど、それでよければと言うと船橋は目を輝かせた。 「肝心の望遠鏡はどうします?」 「俺の親父な、木場大出身なんだよ。俺よりもっと天文オタク」 「…もしかしてご実家にいいヤツがあるとか、ですか」 頷くと船橋はおれの手を取り、行きます!と大きな声で返事をした。 数日後、俺と船橋は山の中腹のキャンプ場にいた。二人でキャンプ飯を作りお腹を満たす。パンに焼いた肉と野菜を挟んだ特製のハンバーガーとミネストローネ。なかなか美味しくできたので、大満足だ。 そしてコーヒーを飲みながら他愛のない話をしつつ夜が更けるのを待つ。そろそろかな、と望遠鏡を準備していたとき。 やけに風が吹き始めてきた。雨が降り出す前の、冷たい風。山の天気は変わりやすい。嫌な予感がして空を見上げたとき、額にポツリと雨粒が落ちてきた。やばい。 「船橋!雨だ」 テントから離れた場所で、観測のために作業していた船橋に大声をかけたが一瞬にして雨が強く降り出した。俺はテントの近くにいたからそんなに濡れずに済んだけど、テントに全速力で戻ってきた船橋はずぶ濡れになっていた。 「ほら、タオル。よく拭けよ、風邪引くぞ」 「ありがとうございます。ひどいなあ…」 タオルを受け取ると大急ぎで頭をガシガシと拭いていく。そういえば少し船橋は体つきがしっかりしてきたな、なんて見ながらふと濡れたTシャツが体にぺったり張り付いて胸の突起があらわになっていることに気づいた。 そしてその瞬間、俺は自分の下半身がギュッと熱くなって慌てた。まて、テントの中でテント張ってどうする! 鍋に残していたミネストローネはかき混ぜるとほんの少し温まっていたので、それをマグカップに入れながら俺はチラチラと船橋の体を見ていた。Tシャツを脱いで水を絞っている間なんてもう直視できない。
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