始まりの物語

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2. 「ごちそうさまでした!」 ケーキは、ミルク味だった。 口に入れた瞬間、クリームは舌触り良く溶けていき、ミルクの甘さをエルメルの口の中に残す。 スポンジも適度な硬さがあり、とても食べ応えがある。 硬さといってもザラザラした感じではなく、しっとりした感じだった。 誰もエルメル好みの味と食感で、エルメルはとても満足した。 「ゴホン」 執事が咳払(せきばら)いしていった。 「さて、糖分を取った後は、お勉強の時間でございます」 「今日は何を勉強するの?」 「今日は、(かい)の違いについてです」 「界の違い?」 「ご存知の通り、お嬢様の住んでいる次元(じげん)は地獄です。さらに他にも天国や、宇宙など、様々世界がございます」 「それが界の違い?」 「いいえ、界の違いとは、その世界そのものが違うということです。同じ場所にあるのにその次元の状態が違うことをいいます」 「どういうこと?」 「たとえば、そうですねぇ…。では、この地球をご覧になってください」 執事が水晶を取り出す。 水晶に映し出されたのは、エルメルがよく知っている地球だった。 名前は知らないが、エルメルの見たことがある鉄の塊が何十個も動いている。 「これは私たちがすでに調査済みの一般的な地球です。当たり前ですが、魔法を使う者はいないので、地球が魔法への耐性を得ていませんでした。唯一の脅威となりうる可能性のあるものは、'(かく)'という高度な熱エネルギーを一気に放出させる爆弾のようです」 説明が終わると、水晶は暗くなり、次の映像が映し出される。 「そして、これが界が違う地球でございます。この地球は、人間が我らと同様に魔法を使い、モンスターがいる、地球です。'ファンタジア'と呼ばれる界にございます」 地球の何十倍あるだろうか、もはや地球では無いような気もするその大きさにエルメルは圧倒される。 ただ広いだけでなく、見る限りほぼ青と緑、地球温暖化も進行していない。 自然が豊かで、さっきの地球では見たことのない生き物が生息していた。 地球とはまるで環境が違った。 「これが界が違う'地球'?…」 「ここは'勇者'や'魔王'なるものがおりまして、どちらも我々のことを敵視しているため、あまり調査が進んでおりません」 -なんでだろう、とてつもなくここに行ってみたい…! 未だ未開拓の地。 勉強机をバンと叩いて立ち上がる。 エルメルの探究心に火がつき始めた。 何かやりたいと思ったらすぐに取り組む。 それがエルメルのポリシーだ。 「ノルマン!」 「…は、はい?」 少し遅れて驚いた様子で執事は応答した。 「如何されましたか?」 「ここに行きたい!」
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