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「ここに、ですか…?」
執事が動揺する。
「うん!お願い!」
「…私に頼まれましても…。閻魔様とマリーナ様がお許しにはならないと思いますよ?」
「てことは、その中に入ってないノルマンは、賛成ってことだよね!」
「いえ、私はそれを申す立場では…」
「いいから、早速お父さんのとこに行こーう!ノルマンも一緒に!」
執事の話は全く耳に入れることなく、エルメルは無理やり執事の手を引いて、閻魔の元へむかった。
しかし、
閻魔の答えは---
--「やめておけ」
「どうして?」
「お前にあそこは危険すぎるんだ。いやまぁ、探究心の強いお前は、いつかは言ってくると思っていたが…」
閻魔がエルメルをチラッと見る。
「こんな早くから言ってくるとはな…普段はおとなしいのに、やりたことがあれば積極的になる性格がマリーナにそっくりだ」
閻魔はハァーっとため息を吐いた。
「申し訳ございません…!私があんな話をしたばっかりに」
執事が謝った。
「よい、悪いのはお前ではない」
「そうだよ!ノルマンは何も悪くないよ!」
閻魔とエルメルがノルマンを慰める。
「お父さん!私、本当にあそこに行きたいの。お願い!私、あそこで暮らしてみたいの!」
必死に閻魔を説得する。
いつしか、エルメルの願いは、行きたいから暮らしたいに変わっていた。
そして、それと同じように、閻魔の考えも、少しずつ変わっていった。
「エルメル、一つ聞く。何故そこまで行きたいんだ?」
「わかんない!でも何だかとっても綺麗なの。だから行きたいの!」
理由はとってもシンプル、「行きたい」から行きたいのだ。
子供の直感というものだろうか。
そう閻魔は考えた。
「そうか、お前がそんなに必死にいうなら、執事付きでならばあそこに住まわせてやらん事もないが…」
「ダメ!1人で行くから意味があるんだよ!」
エルメルが閻魔の提案を一瞬で断る。
エルメルの頬はプクーっと膨れていた。
それを見て閻魔は少し笑った。
「エルメルはそういうと思ったよ。だから、それをしない代わりに2つ条件がある。一つ、1ヶ月に一回は必ず閻魔殿に帰って近況報告をしてくること。そして2つ、死にそうな事態に陥ったらこれを使うこと」
閻魔はポケットから緑のボタンのついた銀の玉のネックレスを取り出す。
「これはお父さんからの最大の譲歩だ。この2つだけは、必ず守ってほしいんだが…どうだ?」
「うん、わかった!」
エルメルは二つ返事でそう答える。
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