始まりの物語

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「よし、じゃあ最初にこいつの使い方を説明する。まぁ、使い方っていっても一つしかないんだが、この緑のボタンを押すだけだ硬さは結構硬めだから、しっかり押さないと駄目だぞ?」 「わかった!」 「よし。じゃあエルメル、出発はいつにするんだ?」 「うーん、3年後くらいにする!いろいろ準備もあるから」 「3年か、明日にでも計画無しに行くのかと思ったが、その心配はいらなさそうで安心した。じゃあ我はその間にマリーナをなんとか説得しなければ…」 閻魔はどう言い訳しようか悩み始める。 -ここはやはり、'可愛い子には旅をさせよ'みたいな感じで行かせましたとかいう言い訳をするか? そう考えていると、執事がコソコソと閻魔に近寄った。 「本当によろしいのですか?」 執事が耳打ちする。 「マリーナにいくら上手い言い訳をしたとしても、どんな目に遭わされることやら。検討もつかん」 そう、結果はあまり良く無かった。 例えマリーナが賛成していたとしても、閻魔は賛成したくは無かったのだ。 -だが…。 「だが、普段あまりねだらないエルメルがあそこまで行きたいと言っているんだ。きっと我らには見えぬ何かがあそこにはあるのだろう」 閻魔の中では何かが働いていた。 -親の勘とでもいうのか? エルメルを行かせた方が良いと閻魔の勘が言っていた。 「なるほど…」 「だから、エルメルがあのボタンを押さないかぎり、殆どの手出しは無用と考えている。あの子が見えないものを見つけて来るまで、気長に待つとしようではないか」 閻魔が少し笑みを見せると、 「そう致しましょう」 と執事がコクリと頷いた。 ---翌日。 「お父さんどうしたの!?」 マリーナにその事実を伝えに行って帰ってきた閻魔は、頭と右足を包帯で巻かれて、松葉杖をついていた。 「一応なんとか説得はしておいたぞ。全く…。一応地獄最強の自覚はあったんだが、やはり嫁には勝てないな」 閻魔が苦笑いを浮かべながらそう言うと、自分のベッドに向かう。 「あ…ありがとう」 若干の申し訳なさを感じながら、エルメルもベットに向かって、人間界の書物を読み始めた。
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