【3】都市伝説

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話を全て聞き終えた3人。 好奇心旺盛で、イジメも多い子供たち。 噂は様々な空想を交えて広まった。 本当の怖さを知るまで続く呪い。 「私が呼ばれた理由が分かりましたよ。頼まれた資料の意味もね」 岩崎誠が、1番に口を開いた。 「すみません岩崎社長。調べられるのはあなたしかいないと思って」 「どういうことかな?」 富士本の問いと同時に、山本とラブも彼を見る。 鞄からタブレットを取り出し、開きながら話す。 「これらの事件から数年間が、所謂(いわゆる)バブルの絶頂期。日本経済は賑わい、開拓が広まって、マンションを超えた億ションと呼ばれた高級物件が次々と建設され、飛ぶ様に売れました」 懐かしい言葉に、その頃を思い出す。 「アイ、現在の地図と衛星画像を」 モニターに映された武蔵村山市。 過去の姿は跡形もない。 「国は都市部郊外に宅地醸成を進め、その盛り土の小盛山を取り除き、土は東京湾の埋立に利用されました。その宅地開発に協力…と言うか、参入したのが我が社と、白和泉建設、他数社。武蔵村山市は、我が社が担当した様です」 タブレットで、その内容を示す資料を見せる。 「ではこれらのマンション群は、岩崎建設が?」 「はい、もちろん全てではありませんけどね」 そこで柴咲が核心に迫る。 「いくら歴史を調べても、あの小盛山が何故造られたのかは、分かりませんでした。でも開拓した御社なら、何かの記録がないかと…」 大きく一呼吸し、岩崎が意を決した。 「富士本さんの前で言うのも何ですが…国絡みの大きな開発には、色々と表には出せないものが、沢山あるものなのです」 左に座っている柴咲に、ニコリと首を傾ける。 ん?…と言った顔でニコリと返す柴咲。 「この話は、オフレコでお願いします」 「バレたか…」 後ろの椅子に置いていたバッグを手に取り、中からボイスレコーダーを取り出した。 「報道関係の方には、慣れていますので」 「あらら、柴咲さん録ってたの?」 そう言いながら、テーブルに置いたスマホを持ち、レコーダー機能をオフにする山本。 「職業病ってことにして、大目に見て💦」 申し訳なさ気に首を縮め、苦笑いする柴咲。 「念のためですが、アイさんもお願いします」 「了解しました岩崎様」 スピーカーから、アイが答えた。 「柴咲さんから相談を受けて、武蔵村山市で我が社が手掛けたマンションについて、土地を開拓した頃の記録を探しました」 「そんな古いものまであるとは、さすがは建設業界のトップですね」 「そう言う富士本さんのところにも、古い記録はシッカリ残されているでしょう。私の父は用心深く、特に政府関連の物件については、本来は駄目なのですが、写しを保管していました」 「そうですか、前社長の重蔵(しげぞう)さんとは、何度かお会いしたことがあります。元気にしてますか?」 「恐らくは…あまり良い話での知り合いではないでしょうが、元気にしてますよ。ほぼ毎日、妻の静華(しずか)の父、流水(るすい) 源人(みなと)先生の道場に通い、流水流柔術を習っています」 「確か静華さんは、うちの鳳来(ほうらい) (さき)の双子の妹と同じ職場でしたね」 「あぁ…ミニスカハイヒールのスタイルまでそっくりの、鳳来 美夜(みや)さんですね。今は我が社のマンション・不動産部門で働いています」 「世の中広い様で狭いって、典型的な例ですね。ところで…話を戻して貰っていいでしょうか?」 ほのぼの楽し気に()れていく話を、ラブが元の道に引き戻す。 「あっ、すみません。とにかく、かなりヤバい話しですので、秘密厳守でお願いします」 「了解、皆んなもいいわね?」 ラブの仕切りに、うなずく3人…とアイ。 「当然その番組には使えません。信用してはいますが、約束してくださいね柴咲さん。誰かに話したら、局どころか、この世に居られなくなるかも知れませんので」 「マジ?…わ、分かったわ。お願いします」 本当は聞かない方がいいと感じている。 しかし、聞かずにはいられないのが人の(さが)であり、報道関係者なら尚更であった。
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