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柴咲が付け加える。
「姫城刑事が、マンションが建ってからも、そこを訪れていたのは確認しました。山も神社も失った怨霊にとって、家族の虐待に耐え、恨みを抱えた少女は、格好の器だったはず」
「紗夜が…器」
認めたくはないが、確かに相応しい。
「全て調べました。姫城刑事をコンビニへと誘い出したのも紗夜。その妻智代さんに自分をイジメさせ、殺害したのも恐らく。そしてアメリカで人の肉体に慣れて力を付け、帰国して手始めに、紗夜の復讐に手を貸した」
「まさか…紗夜はアイツの全てを知っていると言うのか? そして『コマモリさん』に頼んだと?」
「それは分かりません。少なくとも紗夜さんは優しい人です。飛躍し過ぎかも知れません。ただ、紗夜さんが面会した後、獄中で不審死とされた男も、薬物の過剰摂取で死んだとされた女も、検死官の話では、その心臓は、まるで握り潰されたかの様だったそうです」
「確かに彼らは、紗夜が復讐する対象ではない…つまりそれはアイツの仕業か」
「それからも、紗夜さんが帰国してから、彼女の周りでは異常な事件が次々に発生し、多くの人が死んでいます。もちろん全ての事件には首謀者がいて、動機がありますが、余りにも多くの命が悲惨な死を遂げているのは、やはり気になります」
決して紗夜が起こした事件ではない。
しかし彼女の右手に居るモノは事実。
柴咲の懸念も、全否定は出来ない。
「以上が、今日集まってもらった理由です。安心してください。この企画は諦めます。公開しても、無駄に不安や不信感を持たれるだけで、立証は出来ませんから。ただ、分かった真実は、皆さんには伝えておくべきかと」
「ありがとう、柴咲さん。礼を言います」
富士本が頭を下げる。
「今のところ、アレは事件解決にも貢献している…と言うか、紗夜を守っているし、彼女の中にいる以上は、心配ないかと思います」
「ですよねラブさん。紗夜さんに限って、その力を悪用することはないわ」
「私も皆さんと同様に、紗夜さんを信頼しています。でも忘れないでください。もしそれを願えば…できること。アレは…
『コ・マ・モ・リ・さん』
だと言うことを」
複雑な心境であることには、変わりはない。
しかし、真実が分かったことは重要で、ある意味大きな蟠りの謎は解けたのである。
「その資料は、もう私には不要だから任せるわ」
一礼して出て行く柴咲と山本。
見送る富士本とラブ。
この時ラブの心には、嫌な予感が渦巻いていた。
『コマモリさん』
ソレは、もう一つの強大な悪を知った。
そして、その悪も紗夜の中にいるモノを知った。
高嶺…雅。
人の命を最も簡単に操れる二つの悪魔。
その目的は何か?
ラブの予感は、外れたことは…ない。
〜『コ・マ・モ・リ・さん』〜
完結。
【追記】
読んでいただき、ありがとうございます。
本作は、心理捜査官 紗夜シリーズの最初の謎を解いたものです。
気になる方は、紗夜のデビュー作。
イノセントハンド をどうぞ。
https://estar.jp/novels/14042208?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=viewer
英訳までされたオカルトミステリーです。
また、最後に名前が出て来る、高嶺 雅。
彼女?彼?の誕生は、
『欲望が生む復讐に、罪を問う正義はない』
https://estar.jp/novels/26035043?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=viewer
その本編は、これになります。
Cell 〜命の進化〜
https://estar.jp/novels/26036920?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=viewer
✨心譜より✨
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