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【2】連鎖
内緒話に制限はない。
いつの間にか子供達の間で広まった噂。
子供の好奇心と想像力は、制限を持たない。
自分の常識と良識を持つ、鈍い大人とは違う。
武蔵村山市南、立川市寄りの私立武蔵陵明高校。
進学率の高い優秀校である。
「ねぇねぇ、内緒なんだけどね…」
「またヤバい話でしょ〜。水野ってさぁ、いつもどこから仕入れて来るのよ」
「でも、結構マジなこと多いよね。今日は何?」
朝、席に着いた清水美樹と斉藤静香の元へ、待ちかねていたかの様に、水野由里が来た。
「うちの親父が酔っ払って帰って来てさ、わたしに説教垂れたのよ」
「酔っ払ってって、水野のお父さんて確か警察官でしょ?」
「静香ぁ、警察だってそりゃあ飲むわよ。でね、酔うと色々母に喋ってたりするわけよ」
「それが情報源なのね、納得だわ。警官としてはどうかと思うけどね」
3人の中で1番落ち着いて真面目な清水。
「真面目ね〜相変わらず。とにかく、聞いてよ。そのせいで私、昨日は眠れなかったんだから」
「水野が眠れないってことってあるの?」
「学校でよく寝てるからよ、静香」
「酷い言われようね。話すのやめよっかな〜」
まだ始業まで10分はある。
「聞いてあげるから、言いなさいよ〜。話したいんでしょ? 私もやっぱり気になるし」
それを待っていた水野。
「あのね、泉中で死んだ2人は知ってるよね?」
「泉中…あれはこの街で初めての校内自殺だからね。でも、死んだのは1人でしょ?」
不可解な点はあれど、実証するものは何もなく、イジメについても、2人の死を怖がり、誰も話すことはなかった。
「実はあの日の朝、もう1人3年生が死んでて、病死とされてるんだけど、その姿は、骨と皮だけの痩せ細った老婆だったのよ!」
「中学3年生が、老婆に?」
「あり得ないでしょう、くだらない」
「まぁまぁお二人さん、話は最後まで聞いて。その彼女は、幼馴染だった隣のクラスの子をイジメてて、自殺したのは、その子なのよ❗️」
「マジで?」
さすがにそうなると、老婆が気になる。
「その自殺した子なんだけど、体グチャグチャだったって。それこそあり得ないわよね? たかが3階から落ちて、そんなになる?」
「確かに…それは私も新聞の記事を見て思った」
「実は彼女、ある神社で怨みを込めて祈ったらしいのよ。そのせいで、イジメてた彼女は異常な死に様だったの。きっと呪い殺されたのよ」
神社、怨み、呪い、殺された。
不気味な言葉に、否が応でも怖くなる。
「じゃあやっぱり落ちた彼女は、呪い殺した祟りとか? やだ、怖ぁ〜い」
「でもこの街には、そんなおかしな神社はないでしょ? やっぱり作り話よ」
認めたくない気持ちが、現実を引き合いに出す。
「それがね、怨みが強い子供が、復讐をしようと思った時に、あの小盛山に現れるんだって。その名前はね…コ・マ・モ・リ・さん」
「やめてよ、そんな言い方!」
一文字一文字区切ることで、不気味さが増す。
彼女達の頭から、暫く消えはしないであろう。
そして実際、それは3人の心に、深く刻まれることになるのである。
「呪い殺したことを、誰かに言ったら、本人もその代償として、悲惨な死を遂げるってわけ」
グチャグチャになった姿が思い浮かんだ。
そこで、チャイムがなり、3人は恐怖から、解放された。
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