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美しいものは時に人の心を惑わす だからもし、一目で見とれてしまったものがあったとしたら、興味本位で後を追ってはいけない うっかりフラフラ着いて行ってしまったなら、もう二度と、帰って来れなくなるかもしれないから―― *** 今宵は上弦の月が幻想的な夜だ。 とある裏山に、さびれた鉄塔がひっそりとそびえ立っている。 そこに一羽の鳥が、これまたひっそりととまっていた。 カラスである。 羽を休めているのか、じっとして動かない。 カラスはソコから見える光景を、ただ静かに見下ろしていた。 ソコはこの町の景色が一望できる。カラスにとってお気に入りの場所であった。 この時間は夜景がキラキラと美しく、じつに素晴らしいのだ。 カラスはそんな町の様子を、焼きつけるかのようにその目に映している。 鋭くも、その目はどこかうつろ気であり、いったい何を思っているのかはわからなかった。
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