3人が本棚に入れています
本棚に追加
00
美しいものは時に人の心を惑わす
だからもし、一目で見とれてしまったものがあったとしたら、興味本位で後を追ってはいけない
うっかりフラフラ着いて行ってしまったなら、もう二度と、帰って来れなくなるかもしれないから――
***
今宵は上弦の月が幻想的な夜だ。
とある裏山に、さびれた鉄塔がひっそりとそびえ立っている。
そこに一羽の鳥が、これまたひっそりととまっていた。
カラスである。
羽を休めているのか、じっとして動かない。
カラスはソコから見える光景を、ただ静かに見下ろしていた。
ソコはこの町の景色が一望できる。カラスにとってお気に入りの場所であった。
この時間は夜景がキラキラと美しく、じつに素晴らしいのだ。
カラスはそんな町の様子を、焼きつけるかのようにその目に映している。
鋭くも、その目はどこかうつろ気であり、いったい何を思っているのかはわからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!