ある頭の弱いめんどりの話

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 あるところに、一羽のめんどりがいました。  そのめんどりは、他のにわとりより生まれつき頭が弱くて、みんなからバカにされ、仲間外れにされていました。めんどりはいつも悲しい、寂しい思いをしていました。  ある日、めんどりは卵を生みました。めんどりは大喜びして卵を温めました。彼女は知っていたのです。卵から、小さな可愛いヒヨコが生まれることを。  他のにわとりは彼女をバカにしました。その卵は無精卵と言って、ヒヨコは生まれないのだと、何度もめんどりに言いました。めんどりは卵を取るために飼われていて、相手のおんどりもいません。有精卵のはずがありませんでした。  でもめんどりは聞きませんでした。すぐにでも卵からヒヨコが孵って、お母さんになれるのだと信じながら、来る日も来る日も卵を温め続けます。 「あたしは頭が悪いから、お母さんに可愛がられなかった。だからあたしは、生まれたヒヨコがどんな子でもうんと可愛がってあげるんだ。いいお母さんになるんだ」  めんどりは次から次へと卵を産み、喜んで温めました。めんどりには、卵の殻を割ってピヨピヨと鳴いて寄ってくる、可愛いヒヨコ達が目に浮かぶようでした。 「こんなに沢山の子達のお母さんになれるんだ。これはきっと、今まで寂しかったあたしへのご褒美だ」  めんどりは毎日卵の世話をしながら、卵に話しかけます。そのうち、卵の中のヒヨコ達から返事が聞こえてくるようになりました。  毎日、楽しそうに卵とおしゃべりするめんどり。周りにどんなにバカにされても気にしません。この時彼女は、世界一幸せなめんどりだったのでした。
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