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今日はオーディションだ。
憧れている脚本家のオーディションが
ついに受けられる。
日常を描いた心に沁みるタイプのドラマで
結婚と仕事に揺れる女性役の募集である。
入念にヘアメイクもしたし
コンディションも万全だ。
今回の課題は
三つの「また会えたね」
課題の攻略もしっかりしてきた。
一つ目の「また会えたね」は
子供の頃仲がよかった友達と
会いたいと願いながら今の生活に追われ
その思いも諦めになってきた・・そんな頃に
もう一度会えた・・
変わったお互いに対する戸惑いと
変わらない共通の思い出・・
日常にある気持ちの流れを丁寧に表現しよう。
二つ目の「また会えたね」は
死期の近いおばあちゃんが
孫と会うたびに思わずこぼす挨拶のような
安堵する気持ちと小さな幸せが積み上がってゆく
繊細な表現でアプローチしよう。
三つ目の「また会えたね」は
独りよがりの恋愛をしたものが発する
とろみがかった色気と滲み出る狂気
嫌悪と魅力の狭間で観客を惹きつける
そんなパワーのある表現で
オーディションにインパクトを残そう。
なんだか、受かる気がしてきた。
さあ、そろそろ呼ばれる。
背筋を伸ばして、顎を上げる。
次だ・・
「山田大次郎さん、どうぞ。」
女優を目指して３０年が過ぎた。
今度こそ！
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