序 夏休みと祟り

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私が通う高校は、他の学校とは少し違う。 「神役修詞高等学校(しんえきしゅうしこうとうがっこう)」、通称・神修(しんしゅう)は特別な力をもつ学生が、神職を目指す高校だ。 私にその特別な力があると知ったのは、中学三年生の冬のこと。 志望校の受験のさなか、唯一の家族である兄・祝寿(いこと)お兄ちゃんが倒れたという連絡が全ての始まりだった。 病院へかけつければ変わり果てたお兄ちゃんがベッドに横たわっていた。家の近くで倒れていたのを、近所の人が見つけて救急車を呼んでくれたらしい。 その病院からの帰り道、妙な気配を感じながらも家へ帰ると、その夜、私は「妖」と呼ばれる異形に襲われた。 死を覚悟したその時、助け出してくれたのが私とお兄ちゃんの後見人を名乗る、神母坂(いげさか)禄輪(ろくりん)さんだ。 お父さん達とは親しい友人だったと言う禄輪さんに連れられてやってきた「かむくらの社」という古びた神社で、私は両親の過去や自分がもつ力について知らされることになる。 私は「言霊の力」と呼ばれる、口にした言葉を"その言葉通り"に自在に操る力を持っていた。 私の力は親譲り、両親やお兄ちゃんもその力を持っていて、その力で妖や人々を導く「神職」だった。
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