序 夏休みと祟り

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そして十二年前、この世界に最強の妖「空亡(くうぼう)」が現れ、たくさんの神職が戦い殺された。 両親もその中の一人だった。 幸い、お父さんとお母さんに守られて一命を取り留めた私とお兄ちゃん。 私の親代わりとしてその事実をひた隠し、お兄ちゃんは私の知らないところで危険から守ってくれていた。 両親のことお兄ちゃんのこと、自分の中に宿る特別なこの力のことを知るため、私は神修へ進学することを決めたのだ。 近くのファストフード店へ入った私たちは、バーガーのセットとシェイクを頼んで二人席を陣取った。 外が暑かったからか、ちゅうっと半分ほどシェイクを飲み干した恵理ちゃんはぷはっと息を吐いて身を乗り出した。 「一体何があったの? 入試の日、試験監の先生に呼ばれて出ていってからパッタリ連絡が取れなくなって、本当に心配だったの」 眉をひそめた恵理ちゃんが矢継ぎ早にそう尋ねる。 「先生からはちょっとだけ聞いたんだけど、いこくんが倒れたんだよね……?」 「……ん。そうなの。お兄ちゃんが大怪我を追って病院に運ばれて。その後はバタバタしてたから、ちゃんとお別れの挨拶も出来なくてごめんね」 ふるふると首を振った恵理ちゃんは私の手をぎゅっと握った。
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