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いなくなった彼
「やぁ、また会えたね。」
突然背後から声をかけられた。その声は聞き覚えのある優しい声だった。声の方へとゆっくりと振り返る。
3メートルくらい離れた位置に一人の男性が立っていた。声の主はやはり昔別れた彼だった。
「今ごろどうしたの?」
そう質問すると彼は困ったような顔を見せた。私は慌てて
「あぁ、ごめんなさい。困らせるつもりじゃなくて…ただちょっと驚いただけ。」
私がそう言うと彼は少しホッとした表情になったように見えた。
「久しぶりだね。元気だった?あ、元気って言うのも何だか変だね?でも元気そうで良かった。あれからずっと心配してたんだよ。どおしてるのかな?ってさ。あっそうだ、キミに伝えなきゃいけない事があったんだ!」
私は久しぶりに彼に逢えた嬉しさと、彼がまたすぐに居なくなってしまうんじゃないかという不安でとにかく話し続けた。
彼は黙って私の言葉を聞いている。あの頃と変わらない優しい笑顔のままだった。
──10歳年下だった彼とは3年間一緒に暮らしていた。当時彼は大学を卒業したばかりで結婚はしていなかったけど毎日が幸せだった。
この先もずっと一緒いようと約束していたしこの幸せが続くと思っていた。
けれど突然、彼は私の前から姿を消してしまった。
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