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「すっげえ。嫁さんにほしいくらいだ……」
思わず声に出してしまい、諒太は自分の口を手で押さえる。我ながら何を言っているのだろう――ハッとするも、もう遅い。
「はあ、嫌っすけど」
ばちっと本人と目が合い、整った眉を寄せられる。ついでに、隣にいた講師にクスッと笑われてしまった。
「いや、ごめんよ……今の忘れて」
言って、諒太は苦笑いを浮かべた。こんなことを口走ってしまうなんてどうかしている。穴があったら入りたいとはこのことだ。
(気まずっ!)
相手はさして気にしていない様子で、淡々と調理を続けていたが、諒太としては気が気ではない。
今日が第一回目の料理教室だというのに、いきなりの失態で最悪だ。しばらく諒太は、まともに顔を上げることができなかった。
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