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今日のこと
ここまで思い出したとき、正志が悲鳴に似た叫び声をあげた。
「うわっ、前野明日香だ!」
「どこ?」
「あれだよ!」
数10メートル先の角を曲がってくる小さな人影を指さす正志。智也が指の示す方向を見ると、人混みの中にかろうじて女性を確認した。よくよく見ると、確かにそれは明日香だった。
よくもこんな遠くから、しかも大勢の中から前野さんなんぞ見つけられるものだ。やはり、コイツの前世はサバンナのシマウマに違いない。
「こっちだ!」
正志は180度方向転換して走り、少し先の角を曲がる。明日香に追われているわけでもないのに全力疾走だった。
充分すぎるほど距離を取ったところで、ふたりは足を止めた。
「次に鉢合わせたら3回目だっけ?」智也が聞いた。
「そう、運命の3回目。そして人生終了の3回目」
「大げさな」
「大げさじゃねえ!」
全身に血が巡って血圧が高いのか、怒っているのか、正志は声を張り上げた。
「なんで運命の3回目がダメなんだっけ?」
「何回も説明しただろ。いい加減、覚えとけよ」
イラつきながらも正志は話しはじめた。
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