プロローグ

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プロローグ

寺田正志は全神経を集中させ、スタスタと速足で歩いていた。サバンナで肉食動物を常に意識しながら生きているシマウマのように。 冷静沈着でいながら、視界に入るすべて──いや、360度すべてを感じ取る。 横にいた垣口智也は、そんな正志に呆れたまなざしを向け 「大丈夫、前野さんはいないよ」 といった。 「いや、お前の目は信用ならん」 正志は相変わらず気を張っている。 (やれやれ、また始まった) 智也は肩をすくめた。 (四六時中、気を張ってるコイツも大変だ。精神的な何かの病名がつくんじゃないだろうか) さすがに本人にはいわなかったが。 智也は最近の正志の様子を思い返した。
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