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「私が泣いたら、お父さんじゃなくてお母さんが謝ったの。『ごめんね、繭』って」
思い出した。
5才の繭が突然泣き出して、なんで泣いているのか分からず、きょとんとする夫。そして、私の言ったセリフを。
『ごめんね、繭。食べたかったんだよね。また明日、作ってあげるね』
「お母さんは悪くないのに、なんで謝るんだろうと思った。今日も、思ったよ」
繭の目はこちらを射貫くようにまっすぐだ。
「おばあちゃんが何と言おうと、お母さんは、悪くない」
繭は娘だから。私の子供だから、守らなくてはと思っていた。
両親が揃っている事、一般的な家庭の存続。
継続することが、子供を守る、一番の手立てだと考えた。
離婚という文字がちらつかなかった訳じゃない。
―間違っても離婚なんで言い出さないでちょうだい。繭ちゃんも、多感な時期なんだから。
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