最強のお守り

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―ちょうど勤続5年なんですよ。ちょっとした表彰状と、クオカード3千円分もらえるらしいですよ。 「私、書道教室もスイミングスクールも1年続かなかった。お母さん、パート5年も続けた。お父さんと、14年以上一緒だった。すごいよ。頑張ったよ。だからさ」 もう、やめてもいいよ。 子供は、思いのほか周りの事情を観察している。 あんなに小さかった子が、私のためにたまご焼きを作ってくれた。私のエプロンがぴったり合うくらい大きくなった。 それで、それだけで私は、もう。 「……お母さん?」 「食べよう。繭の作ったたまご焼き」 いただきますと手を合わせる。私を伺い見ていた繭も、一緒に手を合わせて、「いただきます」と呟く。 口に入れ、咀嚼すると自然と笑みがこぼれた。 「……ふ、ふふ。本当にお砂糖いっぱい入れたのね。あまーい」 「甘すぎる?」 「これくらい甘いの、お母さん好きよ」
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