最強のお守り

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書道教室もスイミングスクールも続かなかった子が、「大変だけど、今度パートリーダー任された」とどこか誇らしそうな顔で帰って来たのを見た時は、人間、いつどこで夢中になれるものに出会えるか分からないなと微笑ましかった。 「お母さん、今日何時?」 実家で呑気に過ごしている夫の事を考えて、眉間に寄った皺を慌てて戻す。 「何時って?」 「パート。今日、何時までだっけ」 「夕方の5時までだけど」 「ドラッグストアのパート、何年目だっけ」 「ええと、繭が小学4年生の時に始めたから、5年目くらいになるかな。……どうして?」 「別に。なんとなく。今日、部室の清掃当番だからちょっと早めに行くね」 「そう」 テーブルの上の食べかけのトーストはもうすっかり冷えてしまい、さっきの電話ですっかり疲れた私は代わりにコーヒーを啜った。 夫の浮気の事は繭には話していない。
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