最強のお守り

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繭がテーブルにお箸を並べていく。続いて、味噌汁、たまご焼きを並べて、私に向き合った。 「お砂糖いっぱい入れて甘くした」 「わぁ、ありがとう。上手に出来たじゃない。綺麗に巻けてる」 おもむろに、繭が言った。 「お母さん、お父さん欲しい?」 「え?」 「お父さん、いる?」 「繭? どうしたの」 「いるなら、私、おばあちゃん家に行ってお父さん連れて帰って来る。けど、いらないならもう、いいよ」 「……」 「私、お父さんと家族やめてもいいよ」 繭にあげようとクオカードを持っていた右手が震えた。 「昔」 繭が私のエプロンを脱いで、椅子に腰かける。 「お父さん、私のたまご焼き食べた」 「たまご焼き?」 「幼稚園の運動会で、お母さんが作ってくれたお弁当の、私が最後に食べようって大事にとっておいたたまご焼き。食べた」 椅子を引く。腰を下ろす。 繭は私をじっと見つめた。
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