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須藤 圭太と出会ったのは、大学時代だった。きっかけは友人の紹介。とても思いやりのある人で、記憶力が抜群で。絶対一度交わした約束は守る人だった。
記念日になると必ず何かしらプレゼントをしてくれた。自分の方がバイトで多忙を極めていてすっかり記念日を失念して、何度も謝る事があった。
「いいよ。舞香の幸せな顔が見られたらそれでいいんだ」
そういう人だった。彼は。
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「ここから投函されたん?」
舞香は、大学時代の友人に来てもらっていた。
「うん。音がしてん。それで見に行ったら……何もなくて……気味が悪いねん」
「姿は見てないのん?」
「うん……」
「でも舞香が聞いた音だけではねぇ、なんとも言えへんやん」
「分かってるよ。でも怖くて。急に物が移動してたり、玄関が汚れてたりとかもするし……」
「いわゆるストーカー的な事を気にしてる?」
「……うーん。そうやね。誰か私の知らないうちに入ってるんやないかって」
「なるほどなあ……」
友人の紗奈はそう言われてゆっくりと玄関の扉を見た。
「監視カメラをつけたらどやろ?それから、もし何か見つけたら、絶対素手では触ったらあかんらしいで」
「なんで?」
「鑑識に回すから」
サスペンス小説を愛読しているいかにも彼女らしいアドバイスだ。
「なあ、カメラって家電量販店とかで売ってるんかな?」
「うん。ネットでも買えるしな。ほら、最近東区で大きなストーカー犯罪があったやん? 用心に超した事はないよね」
「そっか。そうやね。ありがとう」
礼を述べるが、思わず舞香は縋り付くような声を出した。このまま話をしてお終いなのだろうか? 出来たら泊まっていってほしい。
「あと、きちんと施錠はする事! 私、今日はバイトやから!」
泊まるのは無理! ビシッと指を立ててそう言うと、紗奈は無情にもそう言って帰って行ったのだった。
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