わたしの中のたまご

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 お母さんは、私のことを、お花を育てる鉢植えだと思っているのかもしれない、ってときどき思う。  色んなお花の種を植えて、お水をたくさんあげて、どの芽が早く伸びて、どんな花が咲くのかを早く見たいのかも。  だからお母さんはたくさんの種を植えるし、肥料も水も、時間を惜しむことなく与えてくれる。  鉢植えがいっぱいになっていて、土が溢れていても、泥だらけになっていても、咲く花が美しかったらいいのかもしれない。  月曜日はそろばん教室の日。  受付に行くと、 「ちづちゃんは、この前の検定で合格したから一時間遅くに始まるクラスになったのよ」 と受付のお姉さんが困ったように教えてくれた。 「どうする。待たなくちゃいけないけど、お母さんに連絡して来てもらう?」 「大丈夫です。お母さん、まだ駐車場にいるから言ってきます」  なんでか分からないけど、とっさに嘘をついた。  外に出て、駐車場を確認する。  お母さんの車はもうなかった。きっと買い物に行ったんだ。  お母さんは忙しい。私に「無駄な時間」ができないようにしているのと同じように、自分にも「無駄な時間」ができないようにしている。 お母さんは「待つ」というのが苦手だった。  一時間。  お母さんが知らない、私だけの一時間が、ふいにできた。
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