祖母への質問

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 思えば祖母は畑仕事が好きであった。自宅の裏の畑に毎日行っては畑仕事(全て手作業)をしていた。その畑は祖父と一緒に作ったものだそうである。  自分の土地と家、田畑を持ちたいという憧れと願望は、余程強かったものであろう。実際に土地の安い田舎で土地を買い、(農家とは言えない規模であるが)小規模な農地を持っている親族もいる。  私の祖父母は工業地帯に近い所に落ち着いたが(祖父は採石場で働いていたそうである)、祖父の兄弟夫婦は最終的に田舎に移り住んだ。  そこで土地を買い、粗末ながらも家を建てた。特に長男であった祖父の兄は、「己の土地」に殊更強い思いがあっただろうと思う。  戦中・戦後の時期である事も影響としてあったかもしれないが、最終的にそれぞれが別の地域に移住していったのは、土地への憧れがあったからなのではないかと推測する。  以前に、実家でたまたま一枚の写真を見つけた。  祖父が同じ韓国人(又は朝鮮人)の仲間達と野原で宴会(多分花見の様なもの)している写真であった。  祖父の職場、或いは近くの朝鮮部落の仲間達だろうか。祖父以外は全員知らない人達である。ぱっと見、祖父は40〜50歳位か。  皆、実に良い笑顔だった。  日本に渡り、働き、たとえ粗末でも家を持ち、毎日飯が食える。その生活を得ている喜び…それに溢れている。私は自分で勝手にそう解釈している。
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