中国人留学生の先輩との思い出話

2/2
前へ
/61ページ
次へ
 研究室に配属されて2ヶ月弱経った頃。偶然私はOさんと二人きりになった。そこで私は意を決して質問した。 私「Oさんは『日本の戦争』についてはどう思ってらっしゃるんですか…?」  そのド直球の質問にOさんの顔がこわばる。Oさんは私から一旦顔を背け、真剣な表情で考え始めた。その顔を見て、私は「最悪」の方を予想した。  そして私に向き直り、Oさんはやや強い口調でこう言った。 Oさん「日本は朝鮮や満州を獲ったけど、『あの時の日本』はそうするしかなかった! あの時代はそうしないと日本は(西洋列強の)植民地にされる。生き残る為には仕方なかったと思う。 戦争が良いわけじゃないけど、『日本が悪い』とは言えないと僕は思う!」  Oさんの「意見」を聞き、私は一瞬驚いた。そしてすぐにこう返した。 私「おぉ!本当ですか!? いや、実は自分も同じ意見です!」  Oさんは一気に驚いた表情となり、やや興奮気味に話し出した。 Oさん「えぇ!? 本当!? ◯君も同じ? 本当に?」 私「はい、同じです! 生き残るには他にどうしようもなかったと思います。単純に『日本が悪い』とは言えないと思います!」 Oさん「あぁ、そうなのか! いや、良かった! 違ったらどうしようと思った!」 私「自分も正直、そう思いました! めっちゃ緊張しました!!」 Oさん「俺も緊張した! 聞かれた時、どうしようと思った! めちゃくちゃ緊張した!!」    無理もない。在日韓国人の私がわざわざ「日本の戦争をどう思うか」などという話をしてくるのだ。まさか自分と同じ意見だとは思わなかったろう。私が韓国人であることを考えれば、「『日本が悪い』という答えを期待している」と想像してもおかしくない。  だがOさんは、自分の意見を曲げずに言った。顔がこわばっていたのは、緊張と覚悟の現れだったろうか。  その後はお互い安堵して、ゲラゲラ笑った。 私「いやぁ、良かったです! 同じで本当に良かったです!」 Oさん「うん、良かった! 本当に良かったァ!!」  こんな話をしても、クソサヨクもネトウヨも信じまい。  だがこれは、私の大学時代の嘘のような本当の話である。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加